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生活者と一緒に考える、組み合わせる、新たな価値を創造する。 「心」を動かすマーケティング 大阪商工会議所セミナー

2017/03/03

大阪商工会議所のデザインワークセミナーの講師として、代表の広野郁子が2017年1月25日、2月1日、8日の連続講座を行いました。タイトルは、「課題解決型商品(サービス)開発のための、共創マーケティングとアイデア発想法」。企業の代表者や、企画を担当する方々が集いました。皆さん、新製品やサービスの開発に役立つ発想法を知りたいと期待されています。今回、アイ・キューブの初の試みとして、アイブレインズから主婦の方々をお呼びし、公開グループインタビューを行いました。子育て世代の課題は何かを直に聞き、その後は企業の方々と一緒にグループワークもする企画で、どんな結果になるのか、広野もドキドキの3週間でした。

1日目:セミナー「『心』を動かすマーケティング」

まず広野が、今まで関わってきた仕事の内容やマーケティングに関しての考え方をお話ししました。
「マーケティングはデータを扱うけれど、それだけを見ていても新しい発想はなかなか出てきません。上司を説得するのには、データは必要かもしれませんが。モノ余りの現代においては、機能的な価値だけではなく、情緒的価値、感性が重要になってきているのです。

アイ・キューブでは、生活感度の高い主婦に日記を書いてもらったり、お宅に訪問したりワークショップしたり、リアルな実態から提案をしています。
いつもは企業一社に対して、その会社が扱う商品に関する消費者インタビューを行っています。これらは、費用も高く、期間も長いものとなります。今回のセミナーは、消費者調査の経験があまりない中小企業の方々にも、生活者の声を聴くというのはどういうことか実感していただく良い機会になると思います。」

公開グループインタビュー「子育て現場の課題とは?」:生活者の声を聴く

次にアイブレインズより、4名の子育て世代の主婦が参加し、グループインタビューが始まりました。アイブレインズには、現在約200名の生活感度の高い主婦が登録しています。最近、コープ神戸の商品開発に関わっていることが産経新聞で紹介されるなど、女性の活躍の例としてメディアにも紹介されました。

まず、最近買って気に入っている、欲しいなと狙っているものを話してもらいました。高級トースターやお掃除ロボットなど、テレビや雑誌で見たり、友だちが良いと言っているものが挙げられました。見た目がかっこよくてインテリアになじむもの、多少高くても長く使えるもの、満足できるものが良いという意見です。炊飯器ならご飯の味の違いがよくわかるので高いものを、ベビーカーなら見栄もあるのでかっこいいものを。自転車は安全を優先してブランドもの、とのことです。特に子どものものは高くても、安心安全を優先する。子どもに何かあったとき後悔するなら、いいものを選びたいということでした。

子どもを持つ主婦の方々より、生活実感のこもったお話がたくさん出ました

「それが欲しいのは、どうしてでしょうか?」と、広野から背景や本音を引き出します

主婦業は、ほめられないので焦ることもあります。仕事をしていると、認めてもらえますが、主婦の仕事は成果が見えにくいし、終わりもありません。理解してわかってほしい、聞いてほしい、一人の自分を認めてほしいとの切実な声も出ました。やりたいこととしては、ゆっくり映画館で映画を観ること、ママ友と美味しいランチを食べること、週に一度のフラダンスを習うこと。非日常の経験をすると、日常も楽しくなるようです。

ワークショップ「ニーズや課題の捉え方」

主婦たちの話を聞きながら、企業の受講生はポストイットに気づいたことを書いていきました。そして彼女たちもグループに交えて、討議しました。各自が気づいたことや引っかかったことを話し合い、4グループそれぞれ課題を発見したようです。

2日目:セミナー「商品・サービス開発におけるマーケティングの極意」

前回に引き続き、広野から新たな価値の次元を見つけることの重要性について、お話ししました。香りが豊富な柔軟剤や、可愛い柄のマスキングテープ。メーカーが考える、従来の製品の使い方とは違った切り口が魅力で、ヒット商品となりました。このような新たな価値を見つけるには、アンテナ力が必要です。会社の中にだけいたら、ダメ。共感力、価値引き出し力、結び付ける力、遊び心が重要となります。消費者を説得するのではなく、共感してもらう、それが大切です。

こどもOSランゲージから「こどもの感性を商品開発に取り入れる!

今回より、大阪府産業デザインセンター主任研究員の川本誓文さんが講師に加わりました。川本さんは、こどもの価値観に基づくアイデア発想法を使い、遊びゴコロある感性価値商品を産み出す、デザインイノベーションを目指しています。WindowsのOS(Operating System)が異なればコンピューターの機能も違います。こどもと大人のOSも別で、こどもは好奇心を持つ一方、利己心や自尊心が高く、おとなは社会性があるものの、既成概念や周囲の目を気にしがちです。そこで、こども特有の思考や行動を取り戻すことで、大人が自由な発想を産み出すことを可能にします。

発想を助けるツールとして、「プレイフル・デザイン・カード」を使いました。このカードは、一つの単語とそれに伴うイメージが、ポジティブとネガティブが表裏で表現されています。たとえば、「囲われ感」と書かれたカードの表には、「適度に包まれる安心。ひんやりとした肌さわり。ほっこりする温もり。」などポジティブな内容。裏には「隠れられる場所に潜む危険。湿った場所が好きなヘビやムカデ。火遊びでのやけど、有毒ガス、火事。」などネガティブな事柄です。カードと、開発テーマとの偶然の出会いを起点に、そこから連想されるイメージを、ふせんに書き留め、模造紙に貼り付けます。自分が良いと思ったアイデアを選び、どこに引かれたのかコメントし、個人の気付きをチームで共有します。

先週行われたグループインタビューから、川本さんは「子育て世代の課題」として6つを選びました。「オシャレ家電」「片付け」「褒められ」「セーフティキッズ」「盛り付け」「脱日常」です。

その「テーマ」と「カード」から連想を膨らませます。そしてGoogleの画像検索を利用して、何か引っかかる画像がないか探すことが来週までの各自の課題となりました。

3日目:グループワークと発表 最終成果物はどんなものに?

最終日となる3回目の講座では、各グループで、それぞれが作ってきた課題を共有しました。グループで話し合うことで、個人の発想に新たなアイデアを追加し、さらにイメージが発展していきました。

「脱日常」をテーマに選んだグループからは、「大人のゆりかご」と「体験型水族館」というアイデアが出ました。「大人のゆりかご」は、子育て世代の親自身が癒されたい、安心したい・甘えたい・包まれたいという気持ちに応えるというものです。別のグループは、「盛りつけ」をテーマとし、「お皿ごと食べられる、のりでできたお皿」というアイデアが出ました。皿洗いの負担を無くしながらも、罪悪感なく、楽しく料理や食事ができるという面白いアイデアです。

今回ユニークだったのは、生活者である主婦の方も一緒に入って話し合ったこと。企業の商品開発の場面では、ヒアリングや調査をすることはあっても、消費者と一緒に考えるということは、なかなかしないものです。
会が終わって受講者から感想を聞くと、以下のような声が出ました。
「一緒に考えることで、アイデアが膨らみました。」
「何か気になることがあったとき、生活者の意見をすぐに確認できるのがとても良かった。」
「グループワークで、一人では出てこない発想が出てきてアイデアが広がり良かった。社内ではモニターの意見を聞くグループワークをする機会がほとんどないのでもっと上部の人がこういう話を聞ける場を設けてほしい。」

アイブレインズのメンバーにとっても、非日常の経験でした。自分の生活感覚や、困っていることが企業にとって重要な情報であることは、新鮮な驚きだったようです。

アイ・キューブでも、初の試みでした。生活者と共創する機会を、これからもまた創って行きたいものだと感じました。

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