国内実感レポート

around60、心から欲しいモノ、なーんもない

2019/03/15

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本気の「欲しい!」は何処へ?

最近、お気に入りのテレビ番組は『世界はほしいモノにあふれている』(NHK)。トップバイヤーが素敵なモノを探し求めて世界中を旅する紀行番組だ。今まで見たなかで印象的だったのは、パリの幻のビンテージビーズ、カラフルなモロッコ雑貨、北欧の老舗食器、メキシコの草木染のラグなど。

今風に言えば、みんな「KAWAII」!!

だけど、それらは旅という非日常体験につながるモノたちで、旅人ではない私が心から欲しいかというと、「いや、別に欲しくない…」となってしまう。

このように、ここ数年「ほんとに欲しいモノがない」という状況が続いている。

「物欲」がなくなった?

断捨離を極めてミニマリストになった?

いや違う。

かつては物欲のカタマリ?!

50代前半までの仕事が多忙だった頃は、なぜか「コレ買いたい」というモノが現れていた。「自分へのご褒美」と銘打って、ちょっと高価なブランドものを買って心が満たされていたものだ。物欲が働く意欲につながる部分もあり、私のなかの「時代遅れのバブル」だったのかもしれない。

誕生日に購入したヴィトンのバッグ、ボッテガの財布、オメガの時計。

50代後半、子育てが終わり、仕事もホッと一息ついたとき、私のキーワードは「ていねいな暮らし」へ。仕事中心の暮らしから、改めてきちんと普段の暮らしをやり直そうと思い、道具から欲しいモノを買い替えた。おしゃれなヨガウェアをかっこよく着たいがために、筋トレと食生活改善にも励んだ。

料理の腕まで上がりそうな気がしたル・クルーゼの鍋、スキレット、
グラタン皿とクリステルのスタッキングできる鍋。

藍色が好きで、藍色のカップや食器を集めるのが楽しかった。

フィットネスクラブでは、普段は着にくいデザインやカラーも平気で着られることが気分転換に。

そして60代に突入。平成も終わりに近づいた今、それとわかるブランドものはどこかダサいと感じ、人目を意識し肩ひじ張ったていねいな暮らしではなく、自分の物差しでラクに暮らしたいと考えている。普通に生きている限り、もちろん食料品以外の買い物はしている。最近では、4年半使い充電器の差込口が壊れたスマホ、傷んだスニーカー、割れた陶器のコーヒードリッパーなど。これらは私にとって必需品である。スマホは日々進歩する機器なので、一応調べて最新機種に買い替えたが、ガンガン歩けるスニーカーと毎朝使うドリッパーは、特に迷うことなく以前と同じ商品を選んだ。必要に迫られた、ごく平常心での買物だったといえよう。

その原因、ワタシ的に分析してみた

団塊世代から私たちの世代を、巷では「アクティブシニア」と呼び、消費をリードする存在と思われがちだ。とはいえ、少なくとも私の周囲では、消費の一翼を担うような買い物をしている友人は見当たらない。なぜ、かつてのように目の色を変えて「なにがなんでも欲しい!」と感じさせるようなモノと出合えないのだろう。個人的には、内的な原因と外的な原因があるように考えている。内的な原因は、同世代の友人たちはほとんど親の介護問題を抱えていること。私も今年の1月末に義父を見送ったが、一昨年見送った母のときと同様、遺品整理に四苦八苦している。厳しい終末期に寄り添い、その後に待ち受けている山積したモノの片付けを担うことは、自分自身の死生観にもつながる。つまり、そう遠くない自分の死に備え、どのような形で人生の最期を迎えるかに思いを巡らし、その結果として今をどう生きるかにも関わってくるのだ。「モノを買う」という行動にもそんな経験が反映されるのか、買い物に依存する自分やむやみにモノを増やす自分を、簡単には肯定できないのである。

一方、外的な原因は、ズバリ、私たちが欲しいモノをつくってくれない企業にもあるのではないだろうか。見回すと、「ハズキルーペ」は数少ないシニア向けヒット商品であろう。私は老眼鏡不要で、「ハズキルーペ、だぁい好き!」に感情移入はしないのだが、話題の商品として売れているらしい。パロディっぽいCMには、59歳の渡辺謙さんだけでなく若い女優さんたちも登場していて、まったく年寄りくさくないところがウケたのではないかと考えている。シニア向け商品をつくる企業には、加齢対応の商品であっても、若々しさやポジティブ感、センスの良さなどは必須。ぜひ意識していただきたいなぁと思う。

この冬、アウトレットパークのCMで、「欲しいって、楽しい。欲しいって、しあわせ。」というキャッチコピーを見た。セールに出かける若い女性の浮き浮きした気持ちを表現していたため、私も近くのアウトレットパークに行ってみた。結果、ウロウロと歩き回った挙句、「欲しいモノ、なーんもない」と手ぶらでの帰宅であった。やっぱり…。

しかし、「欲しい」から派生する幸福感は、また味わってみたい。時間をかけてでも手に入れたいモノ、他では代替できないモノ、あるだけでワクワクするようなモノ。そんなモノと出合いたい欲望は、いつも密かにくすぶっている。


Fusa Imai
大阪市生まれ。フリーランス・ライター&インタビュアー。元・㈱アイ・キューブ社員。現在は、WEBや企業広報誌等に、トレンド解説やシニア向けコラム等を執筆中。「人生後半の幸せな生き方」に興味があり、そのテーマに関わるヒト・モノ・コトにいつもアンテナを立てている。趣味はヨガ、弓道、アート鑑賞。

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