国内実感レポート

元気シニアが地域経済を潤す~「ねんりんピック」@富山~

2018/12/14

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素敵シニア大集合

六十路を迎え、これからの生き方について思い巡らしている今日この頃。メディアは超高齢社会の到来をネガティブにとらえがちですが、厚労省によると、65~74歳の要支援・要介護率は4.4%、75歳以上でも31.8%だといいます。ならば、7割近くのシニアはまだ元気だし、還暦でこれといって持病のない私なんてまだまだこれから!と、気持ちを奮い立たせていた矢先・・・。そう、まさに「矢先」でした。今年の6月、弓道で「ねんりんピックとやま2018」に出場することが決まったのです。「ねんりんピック」の正式名称は「全国健康福祉祭」。60歳以上の高齢者を中心とする各種スポーツ競技や美術展、音楽文化祭などの文化イベント、健康福祉機器展などの総合的な祭典で、国体のように毎年各都道府県が持ち回りで開催しています。中心となるスポーツには、ラグビー、マラソン、テニス、サッカー、ゴルフなど22の競技があります。県代表に決まってから約5か月。80代1人、70代1人、60代4人。「弓道は学生時代から」というツワモノ揃いのチームに、弓歴わずか5年の私が加えていただき、稽古を重ねて本番を迎えました。

写真左:地元の小学生も裏方として活躍。 チームごとの応援で楽しませてくれました。
写真右:各チームとも、チーム名を入れたユニフォームを着ている。

ざっと1万人が競技場に参集。

地元紙では、その日の夕方に号外も。

11月4日、団体予選1日目。弓道は、5人が各4射、合計20射を2日間、全部で40射での的中率を競います。初日は20射中12本が中(あた)り、70チーム中3位。もう舞い上がりました。ほぼ半分的中すれば決勝戦に残れるため、もしかすると・・・という可能性が出てきたのです。しかし、そううまく進むはずはなく。11月5日、予選2日目はわずか6本しか中らず決勝進出不可。ここで、団体戦はおしまい。

予選に出場した私たち兵庫県チーム。

2日とも控え選手だった私は、「介添え」という、試合中に弦切れなどのトラブルがあった場合に対応する仕事を担当し、射場の中で待機していました。私の出番は、控え選手ばかり約100名の個人戦(交歓試合)。4本だけの行射。ここで2本的中し、「的中賞」として地元の日本酒を賞品としてゲット!夫へのお土産もでき、まあまあ満足のいく結果で終えられました。

交歓試合で、4本目の弓を引いているところ。
3、4本目が的中し、観客席から「よしっ!」という、うれしい声が聞こえた。

得点ボードは○×で表示。5番が私の得点。

書くとたったこれだけ。私の場合はわずか数分の出来事です。弓道の試合時間は、5人が各4本の矢を射る時間でもわずか10分ほど。娘には、「それだけのために、長い弓と重い荷物を持って富山までよう行くね~」とあきれられましたが、自分では十二分に得るものがあったと思っています。まず、下り坂でありながらも、貪欲に好きなスポーツを楽しもうとする姿に感動したこと。弓道に参加した最高齢者は、女性92歳、男性87歳。「そんな高齢の方がほんとに弓を引けるのかな?」と、失礼ながら心配でしたが、実際に拝見すると驚くばかり。年をとっても楽しめるのは弓道の特徴でもあるし、若い頃からの鍛錬の賜物だともいえるのでしょう。私のチームの80歳の女性は、射場に入る前、6名で円陣を組んで「ガンバルゾー!オーッ!」と掛け声をかけたとき「この年になって、こんな場にいることができるなんて」と、心が震えたそうです。周りから何と思われようとチャレンジし、「もうトシだから」とならず、「まだこれから」とワクワク感を持ち続けられる人は、やっぱり素敵です。

「町ぐるみ戦略」でシニアの心をつかむ

もうひとつは、開会式や試合で参加者を支えてくださったボランティアの皆さんに対する「裏方リスペクト」。参加者約1万人、関係者約50万人といわれた今大会は、まさに県をあげてのお祭。街はウェルカムムードで美しく調えられ、どこへ行っても富山県人は笑顔で接してくださり、親切(な気がしました)。イベントを「自分事」として一緒に楽しまれている姿は、今後のオリンピックや万博にもつながるように思いました。ボランティアの自主性は、ねんりんピックが地元のイメージアップとともに、「経済効果」という副産物をもたらすことが認識されているからでしょう。県下に落とされるお金も、宿泊代、食事代、交通費、土産代など、おそらく結構な額。大会終了後、富山旅行を楽しむ関係者も多かったと聞きますから、観光費もさらにプラス。かくいう私たちも、世界遺産の五箇山や宇奈月温泉・黒部峡谷まで足を伸ばし、行く先々でねんりんピック用のジャケットを着た旅行者と出会いました。大会開始前からクーポン付きの観光案内は数多く配布されていましたし、ねんりんのIDカードを提示すると割引が受けられる美術館や観光施設などもあって、富山のあちこちの観光地が、出場者たちでにぎわったことと想像されます。

五箇山の合掌造り集落。

黒部峡谷を走るトロッコ電車からの風景。

県だけではなく市町村も、そのあたりをふまえて行動されていたように思います。弓道は、射水(いみず)市が開催地のため、毎朝、富山駅前のホテルから射水市の弓道場までバスでの移動でしたが、同行した添乗員は射水市の若い職員さん。彼が片道30分ほどの送迎時間中に、広報大使のごとく、射水市の紹介や観光資源などについてアピールされていました。決して流暢とは言えない朴訥とした地元言葉。それがなんとも温かみがあって心地よく・・・。富山県以外で暮らしたことがないという彼に、最後の日、「ふるさと納税しますね」と約束した私。まさに思う壺。とはいえ、こういった「人と人とのつながり」で、その地の印象が決まり、リピートに結びつくのではないでしょうか。仕事で現役の選手が大半を占める国体と違い、リタイア後の選手が多いねんりんピックでは、いわゆる「金時(きんとき)持ち」が主流です。体力だけでなく、おカネと時間もあるシニアたち。ねんりんピックは、元気なシニアの生きがいをつくるとともに、新たなシニアビジネスを考えるうえでのヒントも詰まっていたように思います。


Fusa Imai
大阪市生まれ。フリーランス・ライター&インタビュアー。元・㈱アイ・キューブ社員。現在は、WEBや企業広報誌等に、トレンド解説やシニア向けコラム等を執筆中。「人生後半の幸せな生き方」に興味があり、そのテーマに関わるヒト・モノ・コトにいつもアンテナを立てている。趣味はヨガ、弓道、アート鑑賞。

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