海外実感レポート

アメリカ人の生活に見る、“内”と“外”感覚

2018/10/05

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海外で暮らしていると「なぜ?」と不思議に思う生活習慣がよくあります。日本生活で当たり前に思っていたこと、行われてきたことを誰もやっていないのですからこれは至極当然。でも、それを「そこがヘンだよ」と思う前にどうしてそういう行動、習慣をとるに至ったかに思いを巡らせると、趣味や嗜好では割り切れない深いものが見えてきます。

アメリカ暮らしの長い日本人ママたちとお茶をしていたときのこと。ベテランママの一人が笑いながらある問いかけをしてきました。

「アメリカ生活が長い人とそうじゃない日本人ママを見分ける方法って知ってる?」

「駐在のママはいつも小奇麗な恰好をしている」「自宅半径10キロ以内で生活しているとか?」・・・正解は「平気で地べたに座れるかどうかよ」 これには一同爆笑。

「子供の通う日本人学校の催しのとき、人がいっぱいで座る場所がなかったから床に直接座って打ち合わせしていたら、他のママたちがびっくりして見ていった(笑)」と。日本人“ヘンなアメリカナイズ・あるあるランキング”があるとすれば、これは堂々の一位になるネタでしょう。

確かに、アメリカ人は躊躇なく地べたに座ります。日本人なら新聞やレジ袋など、なにか一枚気持ちだけでも敷いて座るところですが、アメリカ人はおかまいなし。件の友人も昔は抵抗があったけれど長年の間に慣れてしまったのだとか。この「慣れ」が集団化すればそれはもう「文化」と呼ばれます。

さらに、生活習慣は幼少時からの教育にも関係しています。たとえば、子供が電車の座席に上がると日本では親がそっと靴を脱がせる、または脱ぐように促します。しかし、アメリカでは大人も子供も靴のまま両足を座席に投げ出し、それを誰も注意しません。「どうして平気なのかと(アメリカ生まれの)我が子に聞いてみたら、靴を脱いだほうが汚いじゃないかと逆襲されたわ」と友人。誰かが靴をのせた(であろう)汚い座席に素足をのせるほうが不潔だ、というのです。「それに靴を脱いでいたら有事の時にすぐ逃げられないから」という理屈もあるのだとか。いつ何時奇襲をかけられるかもしれない、そんな緊張感が欧米人のDNAに組みこまれていて定着。「汚いことでは死なない。危険かどうかで判断するのよ」というロジックに母親として納得せざるをえなかった、と彼女。これには平和ボケした日本人の目からウロコでした。

ともあれ、日本人にはあってアメリカ人にないものが、“内と外”という感覚。日本人の暮らしはこの二つの空間がシビアに分かれていることで成り立ってきました。玄関をあがれば内なる空間であり、そこに外からの「邪悪な」不潔さはもちこまないのがモットー。それがすべての生活習慣のベースにあるからこそ、靴は玄関で脱ぎ、地べたには座らない。

「アメリカナイズ」を突き詰めていくと、こんな内と外の感覚のずれにたどりつくのも興味深いですね。


長野 尚子
イリノイ州シカゴ郊外在住、フリーライター兼編集者、ときどきカメラマン。週末ジャズ・シンガー。剣道家。「人類平和」を究極のテーマとし、音楽、国際文化交流、教育、食、旅などの分野で人脈を広げながら執筆活動中。極上のブルースを求めてひとりでシカゴの夜を徘徊するのが趣味。著書に、アメリカでの「人生棚卸し」の旅3年間を綴った『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。  facebookのコミュニティ「Chicago Samuraiシカゴ侍」管理人。HP http://www.shokochicago.com/

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