国内実感レポート

ライトでディープな地元の角打ち

2017/08/21

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ハナコ世代の私は今、子育てが落ち着き、「自分時間」を楽しむのが嬉しい時期だ。先日東京に出かけた際には、昔からの友人と久しぶりに会うことにした。夕食後、美味しいお店を探してスマホアプリを開くと、住宅街の中に「角打ち(カクウチ)」ができる店を発見。角打ちとは元々、酒屋の店頭で升酒を直接飲むことだが、転じて店の一角を仕切ってそこで飲むことを言う。日本酒好きの息子と夫が、以前話していた「角打ち」という言葉が頭に残っていて、実はずっと気になっていたのだ。調べてみると、最近では、「ネオ角打ち」なる言葉が生まれていて、スタイリッシュでオシャレ、女性が1人でも入りやすいなど、従来とは一味違う「角打ち」が話題になっているらしい。このお店のコメント欄に「角打ち」という言葉を見つけ、とにかく「行ったことのないタイプの店に入って見たい!」という気持ちになって、足を運んでみることにした。

店の前に来てびっくり。「ネオ角打ち」「角打ちバル」という言葉から勝手に想像していたオシャレなイメージとは異なり、写真で見るよりもずっとずっと「昔ながら」の地元の酒屋さん。中から談笑する声が聞こえ、「場違いかな?」と躊躇して店の前でしばらくウロウロしていると、飲み終えて店から出てきた男性が、「入ってみな。いいお店だよ」と声をかけてくださった。

これに勇気をもらい扉を開けると、店主さんから「いらっしゃいませ」の声。「こちらへどうぞ」と奥の木のテーブルに案内された。手前に座った5、6人の常連さんらしき男性たちは戸惑いがちに「こんばんはー」と声をかけてくださる。

写真:常連のお客さん

とりあえず、他では飲めないと言われる珍しい日本酒と、店主が考案された「酒粕ピザ」を注文した。普通の居酒屋と違って、酒屋さんなのでとにかくツウなお酒が多い。しかも、価格が安い!お酒のおいしさに感動しているうち、常連さんとおぼしきカップルが1組、来店した。「初めてですよね?」と私達に声をかけてくださり、少し話すと私達とご夫婦は4人とも同学年だということがわかり、話がはずんだ。ご主人はご自分のキープしている珍しいウイスキーをご馳走してくださり、お隣の80代の常連さんも、ご自分のワイン樽に仕込んだ焼酎をふるまってくださった。

代々続いてきた酒屋の一画を、角打ちとしてオープンさせたのは5、6年前だという。入れ替わり立ち替わり現れる常連さんたちも、近くに住む方ばかりで長いつきあいのようだ。さぞや皆さん、家族ぐるみのディープなお付き合い、お互いのことも深く知っているのだろうな、と思っていた。でも酔った奥さまが、女性同士のよしみからか、私にご家族のことを話し始めた。ご自分の両親の家に居候していること、ご主人がマス夫さん状態で苦労されていること。その時、後ろで聞いていた常連さんの一人が「そうなの。今まで知らなかった。」常連さんからのこの言葉は意外だった。

みなさん濃い関係で、お互いの家族事情も熟知していると思っていたからだ。ご主人が言った。「こんな店は、他にないですよ。仕事や家で、大変なことがあってもね、誰も何も聞かないんです。みんな各々、色々なことを抱えていることを、言わなくても察しているんですよ。」大人はみんな、重いものを背負って立っている。中身は違うけど、みんなそうだ。荷物を降ろして中身を見せる必要もなく、背負ったまま飲んで談笑する。

このお店はそんなライトな関係で成り立っている。それでいて、誰かが病気になって店に顔を見せなくなったら、誰かがそっと顔を見に行ったりするんだろう。誰かが将来伴侶を亡くした時も、家に閉じこもることもなく、ここに来て飲んでいるんだろう。

写真:店主

「一見さん」に対しても皆さん優しく、身近な人とはライトな大人の関係でいながら、ディープな地域つながりがある昔ながらのお店に、ミドルシニアにとっての、「古くて新しいつながりの形」を見た気がした。こんなお店が近くにあったら、きっと、私は毎日、気取らず「スッピン」で通うだろうな。

(齊藤 京子)


●齊藤 京子●
主婦。子ども2人。結婚後夫の転勤に伴い、引っ越しを7回繰り返す。公園デビューや学校役員などを何度も経験した結果、物事を一歩下がって外から見る癖がつく。日々の暮らしの中の、「なぜ」を考えることが好き。ブログ「朝ご飯とお弁当は夕食からおむすびころりん」http://ameblo.jp/omusubikororinkorokoro

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