海外実感レポート

“小褒め”と世界平和と。

2017/02/28

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先日、シカゴのオペラハウスに行ってきました。
オペラハウスと聞くと、着飾った紳士・淑女を想像して私たち庶民からするとちょっと敷居が高い場所と思われがちですが、実はそうでもありません。むしろそうやって身構えているのは私たちかも。特にシカゴのオペラハウスは、伝統的なオペラだけでなく各種音楽イベントやミュージカルなどの上演に使われることも多く、かなり“庶民的”なのです。この日観に行ったのは、「Chicago Voices Concert」という、シカゴを拠点に活躍する様々なジャンルのヴォーカリストたちが共演する“異種格闘技”のような楽しいイベント。オペラなら300ドル近くするチケットも、今回のようなイベントの際には30ドル(学生)ほどからととてもお得。これならふらりと行ってみようかな、という気にもなりますし、普段はなかなか中に入る機会のない素晴らしい歴史的建造物を体験できるチャンスです。


ゴスペルクワイヤーをバックに、クラシック、ジャズ、ブルース、カントリー、フォークなど様々なジャンルの歌手が勢ぞろい。
メトロポリタン・オペラ、サンフランシスコ・オペラと並ぶ、アメリカ3大オペラ・ハウスの一つである、リリック・オペラ・オブ・シカゴ。

 

チャンスといえば、せっかくオペラハウスに行くのだからと、この日は着物を着ていくことにしました。実は「着物で公共の場に出かける機会をなるべくたくさんつくること」を今年の密かな目標にしている私にとって、これはまさに絶好のチャンス。それに昨今、着物を普段からクールに着こなそうという動きが海外在住の日本人を中心にじわじわと広がっているとか。インド人女性がサリーを着て街を歩いているように、日本人ももっと民族衣装としての着物を普段からカジュアルに着こなしてもいいじゃないか、というムーブメントにも後押しされました。特にシカゴはアメリカでも有数の多民族シティー。着物は、とかくひとくくりにされがちな東洋人のなかでも「日本人」としてのアイデンティティーを表現するツールにもなり、気持ちも引き締まります。

20代の頃によく着ていた少々派手目の紅型は、母が持たせてくれたもの。これを約30分かけてようやく着付け、いざオペラハウスへ。日本人の目からは少し子どもっぽく映る柄も、気にしない気にしない。アメリカでは多少派手目なくらいがちょうどいいのです。

会場に一歩入ると、ロビーは真冬の寒さがウソのような熱気。ワイングラスを持った人たちが楽しげに開演前のひと時を楽しんでいました。着物を着ていたせいか、私もいつもより所作がおとなし目(笑)。そんな私に、見知らぬ人たちが次から次に「あなたの着物、すごく素敵ね」と声をかけてくれました。すれ違いざまに声をかける人もいれば、わざわざ向こうのほうからこちらに駆け寄ってきて私の肩をたたき、「ごめんなさいね、でもどうしてもあなたの着物がきれいだからそれを伝えたかったの」と言いに来る人もいて、なんだか恥ずかしいやらうれしいやら。こういうとき、日本人は当人に聞こえないようにひっそりと褒めますが、アメリカ人は逆。わざわざその気持ちを相手に伝えにくるのです。これには初めは面食らいましたが、褒められて嫌な人はいません。自分が好きと感じたら素直に相手に伝えるのはとても素敵なことだなと感じるようになり、私もあらゆる場面で「あなたの〇〇素敵ね」とか、「あなたの〇〇とても好きよ」などとなるべく口に出して伝えるようになりました。すると、見知らぬ者同士の間にたちまち温かい空気が流れ、その後会話が弾むのです。こんなちょっとした“小褒め”運動が広がっていけば、きっとより優しい世の中になって世界も平和になっていくんだろうな、と感じました。

●リリック・オペラ・オブ・シカゴ:http://www.lyricopera.org/

(長野尚子)


●長野 尚子●
イリノイ州シカゴ郊外在住、フリーライター兼編集者、ときどきカメラマン。週末ジャズ・シンガー。剣道家。「人類平和」を究極のテーマとし、音楽、国際文化交流、教育、食、旅などの分野で人脈を広げながら執筆活動中。極上のブルースを求めてひとりでシカゴの夜を徘徊するのが趣味。著書に、アメリカでの「人生棚卸し」の旅3年間を綴った『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。HP ⇒ http://www.shokochicago.com/

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