海外実感レポート

歌うシニアの社交場

2015/03/15

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DSC04145もうずいぶんと長い間、趣味でJazzを歌っています。アメリカに住み始めてからも歌い続け、シカゴに移ってからは家の近所のレストラン・バーで毎週歌うようになりました。「音楽はユニバーサル言語」と言われますが、本当にその通り。Jazzを通じて素敵な人たちと心を通い合わせ、人生がより豊かになりました。
きっかけはいつも聞いているラジオ番組。近くのバーで今晩ジャムセッションがあるというアナウンスを偶然聞いて、興味がてらに出かけてみたのが最初でした。シカゴは言わずと知れたJazzの本場。市内のJazzクラブなどではいわゆる「プロジャム」というJazzミュージシャンの卵たちが参加するセッションがよく行われていますが、私の住む郊外の町でのジャムはそんなしのぎを削るものではなく、プロをリタイアした歌手たちが残りの人生を楽しむために集まってくる感じ。そのゆるさが私にはかえってちょうどよく、心地よいのです。とはいえ、かつてフランク・シナトラのバックで弾いていたというピアニストが伴奏をしてくれ、昔NYやシカゴでならした歌手が集まるのですから、レベルの高さは一流。そんな中で恐らく一番若い(であろう)ひよっ子の私は、初めて参加した時から温かく受け入れてもらっています。
当初は、日本人の私がネイティブの人たちの前でJazzを歌うことに対する気おくれもありましたが、諭すようにこう言われたのを覚えています。「歌はハートだよ。言葉はその次。あなたはあなた自身のハートを持っていることは私たちには十分伝わるのだからそれを大切にね」 移民によって生まれた国アメリカは、誰にでも扉を開く優しい社会なのだと感じました。
ここに通うようになって気付いたことがほかにもあります。ひとつは、シニアの方たちにとって、こういう郊外の小さなバーはとても重要な「社交場」であるということ。家から近いなじみの場所で気の合う人たちと顔を合わせ、お酒を飲み交わし、何気ない普段の生活の話をして「また来週、お元気で」と別れていく。このルーティンが彼らの生活には欠かせない大切なこと。20年以上もこんな付き合いを続けている人たちがいるのには驚きました。
さらに、アメリカのシニア社会における「夫婦」というユニットの重みも実感します。夫が歌う傍らでそれを微笑ましく見守る妻、若かりし頃のように一緒に食事やダンスを楽しむご夫婦など、この場所で同じ時間を楽しんでいるのは必ず夫婦。日本ではこんな風景にお目にかかったことは滅多にありませんでした。年をとって連れ合いがいるということの意味は、ここアメリカではことのほか大きいものだという事に気づかされ、シニア同士の再婚が多いのもこの風景を見るとなんとなくうなずけます。

(長野 尚子)


●長野 尚子●
イリノイ州シカゴ郊外在住、フリーライター兼編集者、ときどきカメラマン。週末ジャズ・シンガー。剣道家。「人類平和」を究極のテーマとし、音楽、国際文化交流、教育、食、旅などの分野で人脈を広げながら執筆活動中。極上のブルースを求めてひとりでシカゴの夜を徘徊するのが趣味。著書に、アメリカでの「人生棚卸し」の旅3年間を綴った『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。HP ⇒ http://www.shokochicago.com/

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