素敵なヒト・モノ・コト紹介

持続可能なモノづくりに必要なのは、「文化の創造」と「価値の共創」だと感じる

2015/06/02

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SR400

37年間デザインもスペックも、ほぼ変えずに販売しているオートバイがある。YAMAHAのSR400だ。私は中学生のころからバイクが好きで、高校生になったら絶対手に入れたいと思っていたバイクである。しかし当時は、高校生に対する三無い運動(免許を取らせない、バイクを買わせない、バイクを運転させない)が盛んで、バイクに乗るという夢を無残にも摘まれたのであった。

だが、50歳を目前とした2年前、35周年限定モデルの姿を雑誌で見かけ、我慢できずに購入。当時とほぼ変わらぬ姿の新車を手に入れた。工業製品で37年間変わらぬデザインとスペックで価値を提供できているモノを尊敬すると同時に、「なぜそのオートバイが37年という長きにわたって生き続けられたのか」ということに想いを巡らせるのであった。

SR400は単気筒エンジンで、そのオーソドックスでシンプルな構造から、カスタム(改造)のベース車両として人気が出た。購入者のほとんどが自分らしいカスタムを施したSR400に乗り、世界に一台の自分だけのマシンを自慢した。

オートバイブームに乗って、最新のデザインや技術を身にまとい、速さやパワーを競い合う新型車がどんどん発売されていく中で、シンプルで非力なバイクを自分なりにカスタムして楽しむという独自の「文化」がつくられていったのである。まさにブルーオーシャンである。その文化は、確実に「ファン」を増やすと同時に、カスタムパーツを企画製造販売する企業(パートナー)も増やしていった。

メーカーは一級の素材を提供し、ユーザー自らがその価値を高め、その文化をサードパーティーが支える構造ができあがっていった。車両価格以上の改造費をつぎ込むユーザーも多く、理想的なバリューチェーンが生まれた。

メーカーは同じものを提供し続けるが、カスタム文化は新しいパーツを生み、トレンドも移り変わることで常に新鮮さを失わなかった。

シンプルで基本が良くできたオートバイが、ユーザーの工夫する余地を与えたことで新しい「文化」と「産業」を生み、熱烈な「ファン」を増やしていった。オートバイを提供するメーカーとカスタムパーツメーカーやビルダーはWin-Winの関係をつくりあげたことで、それぞれが提供する価値以上のバリューをユーザーに提供できたのである。

このモデルは、21世紀型のビジネスモデルとしても参考になる部分が多い。モノの魅力で差異化できなくなっている今、モノとコトを分離させてはいけない。新しいモノは提供できても、それを必要とする文化(コト)がなくては普及しないからである。

文化づくりに関していえば、一社で創造していく20140814_110447-2のは難しいが、同じ志を持つパートナーとの連携がそれを可能とする。「競争から共創へ」という言葉を常に意識し、世の中に新しい価値を生みだしていくことを考えなければならない。

文化をつくり上げ、37年という月日を変わらずにいてくれたSR400は、私が16歳で味わうはずだったワクワクドキドキを今感じさせてくれている。私もこんな素敵なモノ・コトづくりができるように努力していきたい。